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1.4.3節 部分的交互作用とその検定

 完全無作為化2要因デザインで交互作用が検出された場合には、どこにそれが 強く表れているのかをさらに詳しく検討したいことがある。この問題に対処 するために従来から知られている検定として、単純主 効果(simple main effect)の検定と、 処理-対比交互作用(treatment-contrast interaction)及び 対比ー対比交互作用(contrast-contrast interaction) の検定がある。脚注1

1.4.3.1節  単純主効果とその検定

  まず、単純主効果と通常の主効果との違いについて述べる。Table 1.8 を見れ ば明らかなように、通常の主効果は、(1.70)、(1.71)式にあるように、 2要因(処理)の場合には、各セルの観測値の母平均の言葉でいえば、それらの 行平均、列平均にあたるのに対して、単純主効果は、各行、各列ごとの各セルの 観測値の母平均にあたる。したがって、単純主効果は次の2種類になる:

(1.73)

(1.74)

  そこで、単純主効果の検定のための帰無仮説は、I+J 個あり、つぎのように なる:

(1.75)

(1.76)
  また、通常の主効果の有無の検定のための平均平方が、Table 1.5 および(1.53)、 (1.54) 式より、

(1.77)

(1.78)
であるのに対し、単純主効果の平均平方は、

(1.79)

(1.80)
となる。

  したがって、単純主効果の検定も兼ねた分散分析表は、Table 1.9 のようになる。

すなわち、

(1.81)

(1.82)

  また、

(1.83)

(1.84)

  さらに、

(1.85)

(1.86)

  最後に、

(1.87)

(1.88)
が成り立つことに注意せよ。

  単純主効果の帰無仮説が棄却される時は、当該行又は列の観測値の母平均の どこに差があるのかを検定する。

 単純主効果の検定を用いた論文は数多く見られるが、上述の議論からわかるように、 全体的交互作用が有意でない場合にも、それらのうちの幾つかが有意になる可能性 がある。このことは、言い換えれば単純主効果は必ずしも全体的交互作用の 正確な下位検定にならないことを意味し、全体的交互作用仮説が棄却された時 の下位検定としての論理的整合性に欠けると言えよう。

 また、Kirk (1982, p.371) は、単純主効果の検定は興味深いが2つの処理間の 交互作用を理解するには不十分である、としている。そのためには、彼は、次の節の 処理-対比交互作用(treatment-contrast interactions)や対比-対比交互作用( contrast-contrast interactions)の検定を行うのがよい、と言っている。

1.4.3.2節  処理-対比交互作用とその検定

 Figure 1.3 で見たように、2つの処理間に交互作用がある時には、ある処理の 対比、すなわちある処理の水準間の何らかの平均の差が、もう1つの処理の2つ又は それ以上の水準間で異なる。このような交互作用は、 処理-対比交互作用と 呼ばれ、通常言われる(全体的)交互作用と区別される。

  処理-対比交互作用の有無を検討するためには、通常各セルの平均値をプロ ットし、関心ある対比

(1.89)
や、

(1.90)
を考える。

  この場合の帰無仮説は、

(1.91)

(1.92)

(1.93)

(1.94)
となる。
ここで、任意のAiに対する$\psi_{t(B)}$は、

(1.95)

 任意のBjに対する$\psi_{t(A)}$は、

(1.96)
であることに注意せよ。脚注2

 これらの 処理・対比交互作用平方和(treatment-contrast interaction sum of squares)は、

(1.97)

(1.98)
である。ここで、は、それ ぞれ、対比$\psi_{t(B)},\psi_{t(A)}$での係数 c の2乗和である。さらに、 (1.97)、(1.98)式の平方和の自由度は、それぞれ、I-1、およびJ-1である。

1.4.3.3節  対比・対比交互作用とその検定

  これらの平均平方を誤差平均平方で割って得られるF比によるF-検定で、 (1.91)式から (1.94)式のようないくつかの帰無仮説が棄却されると、われわれの 次の関心は、 棄却された仮説に対応する対比が、もう一方の処理のどの対比と交互作用を しているかを検討する点に移る。この交互作用は、上述の処理・対比交互作用 に対して、 対比・対比交互作用(contrast-contrast interaction)と呼ば れる。

  対比・対比交互作用平方和は、

(1.99)
で、自由度は1である。

  したがって、Table 1.5 で、処理ABの交互作用が有意な場合の分散分析表は、 Table 1.11 のようになる。


 脚注1: 3要因デザインでは、 単純交互作 用効果(simple interaction effect)が考えられる。これは、3つの要因の うち1つの要因のある水準を固定した時の2次の交互作用をさす。 戻る

 脚注2: 一方、その推定値は、もちろん

Aiでの

Bjでの である。 戻る

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