これまで述べてきた完全無作為化デザインでは、取り上げる因子は2つある 場合でも、仮説検定に際する因子の重要性には差はない、という前提を置く。 これに対して、乱塊法デザインでは因子は2つであるが、一方の因子は他方の 因子に比べそれ程重要ではないと考える。このような局外因子が1つある場合の 対処法の1つが乱塊法デザイン(Kirk 流には RB-p デザイン)である。
この節では、まず乱塊法デザインの母数模型と混合模型を示す。つぎに、乱塊 法デザインの1つの変形とみなせる1要因反復測度デザインとその考え方にふれる。 1要因反復測度デザイン ANOVA は、MANOVA の特殊ケースとみなせる {\gt ホテ リングの}{\bf $T^2$}{\gt 統計量} (Hotelling's $T^2$ statistics) を用い て分析することもできる。実際、SAS では1要因反復測度デザインデータを glm ブロシジャの repeated 文を使って分析する場合には、manova 文を使うのと同等で、 repeated 文で特定の項やオプションを指定しない限り、何らかの manova 関連の 情報を出力するので、注意が必要である。
そこで、manova の詳細については第3章で詳しく述べるが、1.5.3 節で manova の特殊ケースとみなせるホテリングの $T^2$ 統計量を用いた1要因反復測度デザイン データの分析方法については、ふれておくことにする。
最後に乱塊法デザイン及び1要因反復測度デザイン ANOVA、MANOVA 方式の ホテリングの $T^2$ 統計量を用いた分析プログラムを示す。
この節でのポイントは、反復測度デザインでは一般に多くの場合、F-統計量が 反復測定を行わない場合に比べてゆがむため、主効果や全体的交互作用のみなら ず対比検定や部分的交互作用の検定に際しても、統計量の自由度の修正等の手当 が必要となる、という点である。
反復測度デザインでは一般に、これらの統計量の自由度の修正等の手当のみなら ず、主効果や全体的交互作用が統計的に有意な場合、非計画的(事後的)検定では、 対比検定や部分的交互作用の検定に際する族あたりの危険率コントロールの問題 も存在する。なぜならば、SAS では前節で述べたように、contrast 文を用いた 一般の対比を検討したり、部分的交互作用を検討したりする場合には、個別対比 ごとの危険率コントロールしか行っていないからである。