前節の乱塊法デザインでは、主要な因子1つに対して局外因子が1つ存在した。 これに対して、主要な因子が2つあり局外因子が1つ存在するようなデータは、 乱塊2要因デザインデータすなわち RBF-pq デザインデータとみなすことができる。
この節では、まず乱塊2要因デザインの模型として最もよく用いられる混合模型 を2種類示す。それらは、{\gt 加算的モデル} (additive model) と{\gt 非加算 的モデル} (nonadditive model) である。前者は、すぐに見るように2つの主要 因子及びそれらの間の交互作用のそれぞれとブロック因子間に交互作用を仮定しない モデルであり、後者はそれらを仮定するモデルである。このいずれが正しいかに よって、要因の効果の F-比の分母を変える必要があるので注意が必要である。
つぎに、1.6.2 節で乱塊2要因デザインの1つの変形とみなせる2要因反復測 度デザインの考え方にふれる。教育や心理の分野では、乱塊2要因デザインは多く の場合原型としてのそれとしてではなく、ブロック因子の各水準に被験者一人一人を 対応させる2要因反復測度デザインの形を取るので、ここでも反復測度デザイン にふれる必要がある。
ただし、2要因反復測度デザインでは、1要因反復測度デザインデータの ANOVA 分析で検討すべき球形仮説もさらに複雑になり、いわゆる{\gt 大局的球形仮定} (global sphericity assumption) と{\gt 局所的球形仮定} (local sphericity assumption) の概念が必要なこと、さらには大局的球形仮定の成否が加算的モデル を選択するべきかどうかと関係するなど、やっかいな議論が必要になる。これらの 詳細は、第2章で議論することにし、ここではそれらを簡単に紹介するに止める。
1.6.3 節では、このようなやっかいな議論を回避できる GMANOVA を簡単に紹介 し、その特殊ケースとしての2要因反復測度デザインの分析方法にふれる。この 問題についても、詳細はここではふれず、第3章に譲ることにする。ただし、GMANOVA を2要因反復測度デザインに適用すると、うえのようなやっかいな議論を回避できる 以上のメリットもある。それは、前節で述べた1要因反復測度デザインの場合と 同様、現状では SAS は contrast 文や repeated 文での contrast 項 を用いる場合、対比や部分的交互作用検定に際して、族あたりの危険 率のコントロールをしてくれないが、GMANOVA を適用し SAS/IML を用いれば、 これが可能になるという点である。
1.6.4 節では、まず SAS による単純な乱塊2要因デザインの ANOVA 分析プロ グラムを示す。つぎに、1.6.5 節では後続の SAS プログラムを理解するための 基礎になる2要因(以上の)反復測度デザイ分析におけるクロネッカー積の利用 方法にふれる。
1.6.6 節から 1.6.7 節では、順に SAS による2要因反復測度 RBF-pq デザイン データの ANOVA 分析プログラム、SAS/IML による2要因反復測度 RBF-pq デザイン データの GMANOVA 分析プログラムを示す。