このページは、令和2年4月27日に一部更新しました。
反復測度 SPF-p.q デザインデータは、GMANOVA によっても分析できる。この デザインデータを GMANOVA によって分析するメリットは、ANOVA 方式の場合の 球形仮定、とりわけ多標本球形仮定のような制約をおく必要がないという点である。
もっとも、GMANOVA でも制約がないというわけではない。GMANOVA の場合には、 データに対する多変量正規性と、独立測度要因の p 個の水準間で共分散行列 が等質である、という制約がある。また、これらの仮定も、水準間でサンプル サイズが等しければ、ある程度の正規性や共分散行列の異質性にも検定量は頑健 であると言われている。
ところで、反復測度 SPF-p.q デザインデータの反復測度要因を構成する反復測度 が相互に通約可能 (commensurable) な場合と、そうでない場 合 (non-commensurable) とでは、分析の方法を変える必要がある。この概念は、 統計学の専門家以外ではあまり知られていないが、例えば Morrison (1967) は 1要因 MANOVA の p 変量が相互に通約可能な場合には、これをプロフィール 分析(profile analysis) と呼んでいる。一方、Timm (1980) は、2重多変 量モデル(Doubly Multivariate Model, 略して DMM) に関連して、この概念を 説明している。
いずれにせよ、反復測度が相互に通約可能ということは、反復測度が相互に同一 の測定単位で測られている、という意味である。通常、MANOVA や GMANOVA を 議論する際に、あまり厳密にこの概念は議論されていないが、MANOVA の場合、 暗黙のうちに通常は p 変量は通約不可能、と仮定されていると思われる。 一方、教育や心理でよく収集される反復測度 SPF-p.q デザインデータの多くは、 通約可能なケースではないか。
実は、反復測度 SPF-p.q デザインデータも、うえの議論を考慮すると、2通り の分析方法を考えなければならない。もし、反復測度間が通約不可能であれば、 当データは通常の1要因 MANOVA による分析を行い、反復測度間の対比は検討すべ きでないであろう。一方、反復測度間が通約可能であれば、当データは Morrison 流に言えばプロフィール分析を行い、反復測度間の対比や独立測度と反復測度間の 交互作用も検討できるといえる。また、後者の分析は、その意味では GMANOVA そ のものの最も単純なケースということができる。
独立測度要因と反復測度要因がそれぞれ複数あり、なおかつ反復測度要因の 中にも通約可能なものと不可能なものが含まれる場合は、まさに DMM の発想が 必要になる。しかし、これについては第3章でふれることにし、ここではふれない。
話を、反復測度 SPF デザインに戻すと、独立測度と反復測度が混在するデザイン では、一般に 1.6.3 節で既に簡単に紹介し、第3章で詳しく述べる GMANOVA の多変量 一般線形仮説とその検定方式が使える。もちろん、既に指摘したように、MANOVA は GMANOVA の特殊ケースである。
実際、このようなデザインデータの主効果や全体的交互作用の検定の帰無仮説 は、複数の独立測度の対比行列を CA、CB、CC などとし、複数の反復測度の変換行列を MP、 MQ、MR などとすれば、1.6.3 節の GMANOVA の帰無仮説 (1.184) 式で、
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(1.226) |
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(1.227) |
また、族あたりの危険率をコントロールした同時検定は、これらの C や M を用いて、対比帰無仮説 (1.206) 式を (1.207) 式により行えばよい。