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このページは、平成11年2月5日に開設しました。
このページは、令和2年4月27日に一部更新しました。
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 2.2 節 反復測定 ANOVA か、(G)MANOVA かの選択の問題

 前節で見たように、反復測定デザインデータの分散分析として、ANOVA を用いると すると、デザインにより各種の球形仮説の適切な選択と検討が必要で、初心者には たいへん煩雑でめんどうである。

 これに対して、MANOVA 方式、反復測定デザインでは正確には GMANOVA で当該データ を分析するならば、これらの球形仮説の選択や検討は全く不要である。なぜならば、 GMANOVA では反復測定デザインデータに特有な水準間の任意の共分散構造(大ざっぱ には、相関構造と言ってよい)をもともとモデル中に含んでいるわけで、せいぜい反 復測定要因と独立測定要因が混在するデザインで独立測定要因の水準間共分散行 列の等質性の仮定や多変量正規性の仮定が存在するのみだからである。

 実際、反復測定デザインデータの分散分析のための SAS 等の出力結果は、オプション の指定の如何によっては、既に第1章で見てきたように ANOVA の結果と (G)MANOVA の結果が混在するので、初心者にとっては混乱の元ともなりかねない。それでは、 反復測定デザインデータを分散分析にかけるとすれば、反復測定 ANOVA を取るのか、 それとも (G)MANOVA を選択するのか、いずれがより適切もしくは妥当なのであろうか。

 この問題については、もちろんこれまでの研究から以下のような結果が報告されて いるが、個々の結論が最終的なものとは必ずしも言いがたい場合もあるし、如何な るデータの場合にもどの方法がよりよいかについて決定的な処方箋が出せる状況であ るとは思われない。もっとも、サンプル数が小さい時は、まず (G)MANOVA は無理で あることははっきりしている。また、サンプル数さえある程度以上あれば、 (G)MANOVA の方が扱いが単純であることもはっきりしている:

  1. 反復測定要因の水準間の分散の違いによる優劣

  2. サンプル数の大小による優劣

  3. 球形仮説の成否による優劣

  4. 第1種の過誤か第2種の過誤かによる優劣

     上述の結果は、反復測定デザインデータの分散分析に際して、ANOVA 方式を取る べきか MANOVA 方式(GMANOVA) を取るべきかが、実験者が第1種の過誤を重視した 仮説検定を行おうとしているのか、第2種の過誤(もしくは検出力)を重視した検 定を行おうとしているのかにも依存することを示唆している。
     もし、実験者が要因の水準間に差があることを(慎重に)主張したいならば、 第1種の過誤を重視するべきであろうし、差がないことを(慎重に)主張したいな らば、第2種の過誤(もしくは検出力)を重視すべきであろう。

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