平成7年度問題28への解答・解説

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この頁は、平成14年9月16日に新たに開設しました。
この頁は、令和2年5月2日に一部更新しました。

 このページでは、平成7年度問題28への解答・解説・問題の評価を行う。

1) 正解 a

2) 解説

 この種の問題では一般的に言って、受験者が確信の持てる選択肢への正誤の 情報から解答を絞るのがよい。実は、もし受験者が記述 A と D は正しいことに 確信をもっていれば、そのような選択肢は a しかなく、これで正解となる。 ただし、ここでは、以下のように問題を順に見ていくことにする。

  1. A については、正しいとみてよい。  
  2. B については、知能偏差値は正規分布を前提としているので、間違い。  
  3. C については、ビネーがはじめて尺度を作った時は合格率を 75% とした が、その後の研究から通常は 60 ~ 70% とされる(田中教育研究所, 1987) ので、間違い。  
  4. D については、正しい。
  5. E については、YG 検査では標準点とパーセンタイル得点の両方が表示され る(例えば、上里一郎(監修), 2001)。偏差値かパーセンタイルかという ことになると、パーセンタイルであるので、正しい。

3) 問題28の評価

 問題28は、知能・学力・性格検査に関わる統計的な知識を問うものであり、 常識的な問題の範囲と言えよう。

 強いて記述 A に関連した興味深い話をあげれば、印東 (1970) によれば、 「もっとも、非常にやかましくいえば、完全にこの形にしたがって分布する母 集団はなかなかないらしく、自然界にそういう事例を発見することに対し、アメリカ で賞金がかけられたが、今日まで受賞した者はいないという話しである」。

 また、周知のように、正規分布は数学者ガウス (Gauss, C. F.) が19世紀の 初等に誤差分布として提案したもので、現在でも数理統計学の大方の理論は正規 分布の仮定にもとづいているが、これを提案した当のガウス自身が提案してから それ程経たないうちに、線形モデルの最小二乗法によるパラメータの推定に際し て、この正規分布の仮定をはずしてしまったこと (McCullagh & Nelder, 1983, p.9)、さらには彼のこの発想が最近では一般化線形モデル (generalized linear model) として、大きく発展しつつあることは大変興味深い。

引用文献

  1. 印東太郎 (1970). 確率および統計 コロナ社
  2. McCullagh, P. and Nelder FRS, J.A. (1983). Generalized Linear Models (2nd edition). London: Chapman and Hall.
  3. 田中教育研究所編著 (1987). 田中ビネー知能検査法 田研出版
  4. 上里一郎監修 (2001). 心理アセスメントハンドブック 第2版 西村書店
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