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このページでは、平成8年度問題22への解答・解説・問題の評価を行う。
この種の問題では一般的に言って、受験者が確信の持てる選択肢への正誤の 情報から解答を絞るのがよい。ただし、この問題には初等的な統計量以外に 歪度、尖度という日頃初等レベルでは問題にしない概念が含まれており、これら の定義を知らないと解けない。平均と中央値の定義がわかっていれば、選択肢 のうち、平均が 5.9 で中央値が 6.5 であるので、正解は b か d のいずれかに 絞られる。中央値 (median) とは、データを小さい方から大きい方に並べたとき 真ん中に位置する値であり、この問題のように少数例でかつサンプル数 N が偶数 の場合は、N/2 と N/2 + 1の順位のデータ値を平均することにのみ注意すればよい。
歪度 (skewness) とは、分布の非対称性の 指標 であり、正規分布などの対称分布では歪度はゼロ、分布の右側に長い すそ野を持つ分布の歪度は正、逆に左側に長いすそ野を持つ分布の歪度は負である。
したがって、問題のような(若干ではあるが左側に長いすそ野を持つ分布の 歪度は負であるから、選択肢 b と d のうち d のみが正しいことがわかる。
尖度 (kurtosis) とは、分布のとんがりの程度 を表す指標であり、やはり正規分布がその標準とされる。ちなみに正規分布の ようなとがりは「中位とがり」(mesokurtic) と呼ばれ、尖度はゼロ(3と定義 することもあるので注意、ここではたぶん正規分布の場合を3とする定義によ る値が問題では示されている模様)、それよりとがった分布の尖度は急尖 (leptokurtic) と呼ばれ尖度は正(正規分布のそれを3とする定義の場合は、 3より大)、それよりゆるい分布は緩尖 (platykurtic) と呼ばれ尖度は負(同 3とする定義の場合は3より小)となる。
(註)歪度、尖度の正確な定義は、順に mu3/(mu2)^(3/2)、および mu4/mu2^2 - 3 である。ここで、mu2 は確率変数 x の平均からの差の2乗の平均、m3 は同 x の平均からの差の3乗の平均、m4 は、同じく同 x の平均からの差の4乗の平均である。ちなみに、確率変数 x が正規分布に従う場合、mu2=sigma^2(分散)、mu3=0、mu4=3*sigma^2 であることがわかっている。したがって、正規分布変量の場合、歪度もゼロ、尖度もゼロであることがわかる。
問題22には、統計量のうち初等的なものと中級的なものが混在しており、 問題としては、正解できない受験者がかなりいるのではないか。また、尖度について は、2種類の定義があり、どちらなのか明記していないのも問題と言えなくない。