この頁は、平成14年9月18日に新たに開設しました。
この頁は、令和2年5月3日に一部更新しました。
このページでは、平成8年度問題24への解答・解説・問題の評価を行う。
この種の問題では一般的に言って、受験者が確信の持てる選択肢への正誤の 情報から解答を絞るのがよい。ここでは、5つの代表的な解析法(重回帰分析、 判別分析、因子分析、クラスター分析、分散分析)の特徴をどれ程知っているか により解答できるかどうかが決まる。実は、この問題では記述 D の分析の大きな 特徴は判別分析であることに気付けば、すぐに正解がわかる。
それぞれの方法の概略については、下記の項を参照してもらうとして、簡単に 問題の4つの言明について、解説する:
重回帰分析 (multiple regression, 又は multiple regression analysis) とは、1つの定量的変数の値の変動をそれを説明ないし予測 すると考えられる複数の(原則的には)定量的変数により説明ないし予測するため の方法である。詳細や、そのための具体例・SAS プログラムの例については、例え ば筆者のホームページ中の 講義ノート「データ解析/基礎と応用」の中の第2章「重回帰分析」のホーム ページを参照のこと。
判別分析 (discriminant analysis) とは、われ われが複数のグループ(単一の定性的変数)の違いを複数の(原則として)定量的 変数により判別したい時に用いられる方法である。一口に判別分析といわれる方法 には、伝統的な判別関数 (discriminant functions) を用いて2群毎の判別を行う 方法と、次元の減少を伴ういわゆる正準判別分析 (canonical discriminant analysis) がよく知られている (例えば、竹内啓編、1989; McLachlan, 1992; 奥野ら、1972)。 また、そのための具体例・SAS プログラムの例については、例えば筆者のホームペ ージ中の 講義ノート「データ解析/基礎と応 用」の中の第4章「その他の多変量解析」のホームページを参照のこと。
因子分析 (factor analysis) とは、複数の定量 的変数に対する反応から、それらの変数の変動を説明する少数個の潜在的変数(こ れを因子 factor と呼ぶ)を見つけだす方法である。現在では、因子分析も2種類 に分けることができる。1つは、伝統的な記述レベルでの因子分析で、探索的因子 分析 (exploratory factor analysis) と呼ばれる方法であり、他方は共分散構造 分析 (structural equation models, 略して SEM) による確証的(確認的)因 子分析 (confirmatory factor analysis) である。詳細や、そのための具体例・SAS プログラムの例については、例えば筆者のホームページ中の 講義ノート「データ解析/基礎と応用」の 中の第3章「因子分析」及び第5章「共分散構造分析」のホームページを参照の こと。
クラスター分析 (cluster analysis) とは、複数 の対象相互の何らかの類似度の指標を定義し、対象間の類似度情報から対象を幾つか のグループ(クラスター)に分ける方法である。因子分析は、この意味では類似度 を対象(因子分析の場合は、対象は検査項目、アンケート項目などであることが多い) 間の共分散又は相関係数とするものといえる。
分散分析 (analysis of variance, 略して ANOVA) とは、1変量データの変動を複数の成分に分解し、あらかじめ被験者の割り付け等に より研究対象になっている(そのデータの変動)要因の効果の有無を検討するための 方法であり、多変量の場合に拡張された多変量分散分析 (multivariate analysis of variance, 略して MANOVA)、さらにそれを被験者内要因(反復測定要因)をも 含む場合に拡張した一般化 MANOVA(generalized MANOVA, 略して GMANOVA、もしくは 成長曲線モデル, growth curve model)などがある。また、最近の20年程では 線形混合モデル (linear mixed models, 略して LMM)や一般化線形混合モデル (generalized linear mixed models, 略して GLMM) などが話題となっている。詳細 や、そのための具体例・SAS プログラムの例については、例えば筆者のホームペー ジ中の 講義ノート「反復測定(測度)分散分析 /基礎と応用」のホームページを参照のこと。
問題24は、分散分析といわゆる代表的で伝統的な多変量解析の方法の入門 レベルを問うものであり、検査の信頼性・妥当性や尺度の性質等の臨床心理士 試験の定番的統計的基礎から比べると、内容の落差は大きいが、これらの方法の 応用可能性を考えると、最小限このレベルの問題はもっと出してもらってよいの ではなかろうか。