第3章 因子分析

  因子分析は、もともとビネーに始まる知能検査の開発の歴史と共に、知能の 数量的把握の方法として発展したもので、スピアマン(Spearman, C., 1904)の2 因子説(Spearman's two-factor theory)、ガーネット(Garnett, J.C.M., 1919-20) に始まりサーストン(Thurstone, L.L., 1931)がうち立てた多因子説(multiple factor theory)、ホルテンガー(Holzinger, K.J., 1937)の双因子説(bi-factor theory)などが知られている。

  これらの理論は、いわば、現象の背後にある因子の数や構造についての大枠を 示してはいるが、必ずしもデータを手にして、どのようにそれらの因子や構造を 抽出するかを答えるものではない。

  これらのうち多因子説が、最も一般的な因子分析モデルであり、その因子数や 因子の構造をデータから推定する方法(解法)が、これまで数多く開発されてき た。

  これらの方法は、推定される因子相互が直交しているか否かで、大きく 直交解 (orthogonal solutions)と 斜交解(oblique solutions)に分けられる。直交解の1つとして良く知られているのが 主因子解(principal factor solution)(Hotelling, 1933) である。一方、斜交解には、オブリマックス解(oblimax solution)(Pinzka & Saunders, 1954)、オブリミン解(oblimin solution)(Carroll, 1960)、クオティミン解(quartimin solution)(Carroll, 1953)、プロマックス解 (promax solution) (Hendrickson & White, 1964)、多群解(multiple-group solution)(Holznger, 1944; Thurstone, 1945) などがある。

  因子分析は、他の多変量解析と異なり、もともと心理学者が提唱した記述統計的 方法であったが、ローレイ(Lawley,D.N., 1940)やヤレスコフ(J\"oreskog,K.G., 1981)らによる 最尤解(maximum likelihood solutions)が可能となり、現在では 推測統計的方法として発展している。

3.1節 多因子模型

3.1.1節 多因子模型の数式表現

  サーストンの多因子説に基づく多因子模型は、つぎのように表される。

Z i j = a j 1 F i 1 + a j 2 F i 2 + ... + a j r F i r + b j G i j . (3.1)

  ここで、Z i j は、第 i サンプルの第 j 変数の値で、平均0、分散1に 基準化されたもの、aj 1, ... , a j r ,b j は、 因子の係数 又は 負荷量(loadings)と呼ばれる未知数、 F i 1 ,F i 2 , ... , F ir , G i j は、第iサンプルの因子の値又は因子得点(factor scores)と呼ばれる。

  すなわち、多因子模型では、個々の変数の値は、r個(r \leq m )の 共通因子(common factors)と、1組の 独自因子(unique factor)の ウエイトづけ合計点で表される。

  (3.1)式は、行列表現では、つぎのように表される。

Z = FAt + GBt . (3.2)

  ここで、