3.3.6節 最尤解の母数模型

  これまで、因子分析における変量模型の最尤解について見てきたが、ここでは やはり Lawley (1941) が導入した母数模型について若干述べる。詳細は立本 (1986)を参照のこと。

  変量模型(3.71)又は(3.72)式では、因子得点 $\mbF$ 又は $\mbf_i$ は、 確率変数であり確定できないが、母数模型

 \mbx_i = \mbmu + \mbA^{\ast} \mbf_i + \mbe_i,           (3.138)
 
では、独立因子のみ確率変数であるので、たとえば、$\mbA^{\ast}$ が既知ならば、
  E(\mbx_i - \bar{\mbx}) = \mbA^{\ast} \mbf_i,          (3.139)
  
より、
  \mbf_i = (\mbA^{\ast t} \mbA^{\ast})^{-1}
           \mbA^{\ast t} E(\mbx_i - \bar{\mbx}),        (3.140)
	   
として、$\mbf_i$ は一意的に定まる。

  しかし、すべてのパラメーター $\mbmu$、$\mbA^{\ast}$、$\mbf_i$ を同時に求める ことは、正規分布の仮定の時でさえ最尤推定量が存在しないことが、アンダーソン とルービン(Anderson \& Rubin,1956)により示されている。