COSAN モデル文は、一般化 COSAN 構造((5.32) 式)を指定する時に用いる。
COSAN モデル文 の一般形はつぎの通りである:
COSAN matrix-term <+ matrix-term ...>; |
ここで、COSAN 文における matrix-term + matrix-term + ... は、(5.32) 式 の右辺の m 個の行列積の和に対応する。また、各 matrix-term は、つぎのように 表記しなければならない:
matrix-definition <* matrix-definition ...> |
ここで、上の matrix-definition * matrix-definition * ... は、(5.32) 式の 右辺の m 個の行列積の1つ1つ(1つ1つが、行列積になっている)に対応する。 さらに、各 matrix-definition は、つぎのように表記しなければならない:
matrix-name(column-number<,general-form<,transformation>>) |
ここで、上の matrix-name の引数、column-number, general-form, transformation のうち、general-form には、IDE(単位行列か特殊な単位行列を持つ矩形行列)、 ZID(単位行列か IDE とは異なる特殊な単位行列を持つ矩形行列)、DIA(対角行列 か、特殊な対角行列を持つ矩形行列)、ZDI(対角行列か、DIA とは異なる特殊な対 角行列を持つ矩形行列)、LOW(下側三角行列、矩形でも可)、UPP(上側三角行列、 矩形でも可)、SYM(対称行列、矩形も可)、GEN(一般的な矩形行列)のうちのいずれ かを指定する必要がある。
一方、transformation は逆行列の種類を記述するためのもので、INV (inverse) は(単純な)行列の逆行列を、IMI は EQS の ( I - β )-1 、 RAM の ( I - K R )-1 、や LISREL の ( I - K J )-1 のような、 単位行列とある行列の差の逆行列であることを指示するためのものである。
Wheaton et al. (1977) の場合、一般化 COSAN 構造 (5.32) 式(の特殊形)にあ たるのは、例えば RAM 構造でこのデータの共分散構造を記述するとすれば、(5.22) 式である。したがって、この場合の COSAN モデル文は、つぎのようになる:
COSAN JR(9,IDE)*KR(9,GEN,IMI)*SIG(9,SYM); |
ここで、COSAN モデル文の最初の JR(9,IDE) は (5.22) 式の右辺第1項すなわち (5.21) 式の J R 、同第2項の KR(9,GEN,IMI) は (5.22) 式の右辺第2項の 行列 K R(これは、(5.22) 式の右辺第2項の ( I - K R )-1 そのものではなく、その一部である K R であることに注意!)、同第3項の SIG(9, SYM) は (5.22) 式の右辺第3項すなわち Σ exg の特徴を、そ れぞれ記述している。
COSAN モデル文に付随する文の1つとして MATRIX 文がある。COSAN モデル文では、 MATRIX 文は1つまたはそれ以上使える。MATRIX 文では、行列のどの要素が定数で どの要素がパラメータかを指定する。パラメータは、正や負の整数を使わずその名前 を指定することにより、定数と区別する。
MATRIX 文の一般形 はつぎの通りである:
MATRIX matrix-name location = list, location = list, ........ location = list; MATRIX matrix-name location = list, location = list, ........ location = list; ........ |
ここで、行列の各要素は、MATRIX 文により指定されない限りゼロである、と仮定され る。
location については、以下のような幾つかの指定方法がある:
|
これに対して、list は特定の位置から始まり特定の方向へ進む行列のリスト として、数値やパラメータ名を指定する。n*r は、リスト中に r の値が n 個 続くことを指示する。また、リスト中の定数は、行列の当該要素が定数であることを、 変数名はパラメータであることを指示する。また、リスト中で、変数名の後に続く カッコ内の値は、変数の初期値を指定したことを示す。
Wheaton et al. (1977) の例では、上述の COSAN 文を含め、以下のように指定すれ ばよい:
COSAN JR(9,IDE)*KR(9,GEN,IMI)*SIG(9,SYM); MATRIX KR [ ,7]=1. .833 5*0. BETA (.5), [ ,8]=2*0. 1. .833, [ ,9]=4*0. 1. LAMB GAM1-GAM2(.5 2*-.5); MATRIX SIG [1,1]=THE1 THE2 THE1-THE4 (6*3.), [7,7]=PSI1-PSI2 PHI (2*4. 6.), [3,1]=THE5 (.2), [4,2]=THE5 (.2); |
ここで、行列 KR、SIG は、Wheaton et al. (1977) の RAM 構造における行列 K R 、Σ exg に対応することに注意せよ。