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 このページでは、ニューラルネットワークについての基礎について解説する:

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この頁は、平成28年7月5日に新たに開設しました。
この頁は、令和2年5月18日に一部更新しました。

ニューラルネットワークの基礎

ニューラルネットワークの研究の歴史を Kandel et al. (2013) に従い概観すると次のようである:

 まず、ニューラルネットワークの原型は、Sherrington (1906) の反射弓 (Sherrington's reflex arc) にさかのぼる。一般に、反射行動は反射弓すなわち感覚ニューロンから スタートし運動ニューロンに終わるシナプスの開いた連鎖からなる。その後、Lorente de Nó (1938) はシナプスループ (synaptic roop) が中枢神経系の基本回路であると主 張した。シナプスループとは、反射弓と異なり、あるニューロンから始まり同ニューロンに戻る閉じ たシナプスの鎖である。一方、Hebb (1949) は、神経系の機能単位としてセル・ アセンブリ という構想を提案し、その後ヘブ則 (Hebb's rule) と呼ばれるシナプス可塑性の 様式を議論した。Sherrington, Lorente de Nó, Hebb らの着想は、その後ニューラルネットワーク の数理モデルとして発展した。

 近年ではニューラルネットワークの数理モデルとしては多様なモデルが知られているが(例えば、 甘利・外山編、2000)、その中でもよく知られたモデルにパーセプトロン (perceptron) と連想記憶ネットワーク(associative memory network) が ある。パーセプトロンは、視覚系のモデルで、多シナプス経路は入力層から出力層へとすべて同方向 に伝わるような回路であり、反射弓をより一般化したモデルである。つまり、パーセプトロンはシナプ スループのない回路として議論されることが多く、その範囲ではフィードフォワー ドネットワーク (feedforward network) の特別例とみることができる。

 これに対して、連想記憶ネットワークは脳がどのようにして長期記憶を保存して想起するかをモデル 化するもので、その中心にあるのはセル・アセンブリ、すなわちシナプスにより相互に結合した興奮性 ニューロンの集団でありシナプスループを持つため、フィードバックネットワーク (feedback network) あるいは再帰型(リカレント型)ネットワーク (recurrent network) と呼ばれる。甘利・外山 (2000) では回帰結合回路 (recurrent neural networks) と呼ばれている。

 いずれにせよ、第1章ではまず最初に脳の構造の初歩的知識について解説する。第2章ではパーセ プトロンについて、第3章ではリカレントニューラルネットワークについて、第4章ではニューロンの 発火モデルについて骨子のみ紹介する。 Eric's back icon

引用文献

 甘利俊一・外山敬介 (2000). 脳科学大事典 朝倉書店

 Hebb, DO. (1949). The Organization of Behavior. New York: Wiley.

 Kandel, E. R., Schwartz, J. H., Jessell, T. M., Siegelbaum, S. A., & Judspeth, A. J. (2013). Principles of Neural Science, 5th edition. New York: McGraw-Hill.

 Lorente de Nó (1938). Analysis of the activity of the chains of internuncial neurons. Journal of Neurophysiology, 1, 207-244.

 Sherrington C S. (1906). The Integrative Action of the Nervous System. New York: Charles Scribner’s Sons. Reprinted by Cambridge University Press 1947 (with a new preface and full bibliography), and by Yale University Press 1961.