データの尺度レベル

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この頁は、平成14年9月23日に新たに開設しました。
この頁は、令和2年5月5日に一部更新しました。

 このページでは、データの尺度レベルについて述べる。

 Stevens (1951) によれば、測定尺度は名義尺度 (nominal scale)、順序(序数) 尺度 (ordinal scale)、間隔(距離)尺度 (interval scale)、比率(比例)尺度 (ratio scale) に分類できる。

 名義尺度では、範疇データ(例えば、男、女 など)に対して名義的に数値を対応させる(例えば、男は 1、女は 2 のように)。 このようにして付与された数値は明らかに順序(大小関係)情報さえも一般には 持たない。

 順序尺度では、順序情報を持つデータに対し て1、2、3などの序数 (ordinal number) を割り付ける。例えば、幼稚園児に 対してクラスメートの写真を見せ、一番よく遊ぶ友達は誰?と聞き選ばれた園児 に1、つぎによく遊ぶ友達は?と聞き選ばれた園児に2、などと割り付けを行う とすれば、それらの数値は順序尺度を為す。正確には、大小関係について、A>B、 かつ B>C ならば、A>C なる関係(数学では推移律 という)が成り立たないと順序尺度とは言えない。

 間隔尺度では、順序尺度では満たされている 順序情報に加えて、尺度の単位あたりの間隔が尺度のどの位置でも等しいこと が保証されていないといけない(等単位尺度、尺度の等間隔性などと呼ばれる)。 例えば、態度尺度で5件法(例えば、賛成、やや賛成、どちらでもない、やや 反対、反対)の5範疇に対して、順に1、2、3、4、5と数値を付与したと する。この場合、例えば 1.賛成、と 2.やや賛成、との間隔1は、どの隣接 2範疇における間隔(例えば、2.やや賛成、と 3. どちらでもないとの間隔 1)をとっても、すべて(心理学的に)等しくなければならない。ただし、間 隔尺度では、尺度の絶対零点は存在しなくてよい。絶 対零点とは、数値0が当該現象について任意に決められるのではなく、 絶対的である場合、その0のことを言う。例えば、温度で言えば、摂氏、華氏、 で測られる尺度は絶対的ではないが、絶対温度は絶対0点を持つ。

 比尺度では、間隔尺度の持つ順序情報と等 間隔性に加えて、絶対零点が存在しないといけない。例えば、長さや重さは絶 対零点の意味があるので、比尺度を構成する。
 心理学の領域では(正確に言えば、現段階での心理学的理論や測定レベルでは)、 比尺度はきわめて少ないと言える。また、厳密に言えば、間隔尺度さえ成り立 つことは少ないと言えよう。
 比尺度は、英語の ratio scale の和訳であるが、これまで研究者によってい ろいろな呼び方がなされている。最近の国内の代表的な辞典では、比尺度と呼ばれ ているが(例えば、竹内編、1989; 中島ら編, 1999)、比率尺度(岩原、1957)、 とか比例尺度(印東, 1970; 吉野ら, 2007)と呼ばれることもある。

引用文献

  1. 岩原信九郎 (1999). 教育心理のための推計学 日本文化科学社
  2. Stevens, S. S. (1951). Mathematics, measurement and psychophysics. In S.S. Stevens (ed.) Handbook of experimental psychology. New York: Wiley, 1-49.
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