まえがき

　教育や心理の分野では、同一被験者に複数の物差しで測定を行い、要因の効果 の有無を検討する場合が多々ある。そのための数理統計学的な方法の１つが、反復測 定もしくは反復測度分散分析、その多次元等への拡張である MANOVA、 GMANOVA であ る。しかし、反復測度デザインデータの分析方法については現状でも理論的に解明さ れていないことがたくさん存在するし、少なくとも本邦においては 反復測度デザインデータの分散分析による F-比の歪みの可 能性 についてはそれに言及する論文はきわめて少ないのが現状である。また、 その代替方法としての MANOVA, GMANOVA に至っては、わかりやすくかつ詳細にそれ らを解説し具体的な統計解析ソフトの使い方まで触れたテキストは皆無に等しい。 さらに、世界的な統計解析ソフトである SAS、SPSS、STATISTICA でさえ、反復測定 デザインについては、場合によってはプログラムを工夫することなしには、必ずし も数理統計学的にみて妥当な結果を出すことができない。
　このテキストは、このような現状に鑑み、統計学、計量心理学、や数理心理学を 専門としない学部学生や研究者のために、分散分析の基礎から GMANOVA までを できる限りわかりやすく解説し、それぞれの節の後半では SAS を中心に、SPSS、 STATISTICA も含めた具体的なそれらの応用を示すことを目標にしている。
　このテキストは、平成１０年３月から本ホームページに構築中である。このテキスト、 とりわけ幾つかの節に亘り掲載して ある クライアントのダウンロードが可能な反復測定分 散分析、 GMANOVA 等についての筆者作成の SAS プログラムについては無料で公開 してある ので多くの方に使っていただきたい。また、今後 SAS プログ ラムの出力結果のみでなく、SPSS や STATISTICA の実行手続き・出力結果の解説や、 これらの統計ソフト間の比較と長短にも触れながら、このホームページの充実をは かっていくので使っていただきたい。

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