平成11年度問題36への解答・解説
この頁は、平成14年9月30日に新たに開設しました。
この頁は、令和2年5月4日に一部更新しました。
このページでは、平成11年度問題36への解答・解説・問題の評価を行う。
1) 正解 d
2) 解説
この種の問題では一般的に言って、受験者が間違いが確信できる問題から
消していくとよかろう。
- A. は、信頼性は、本来は2つの平行テスト間の相関係数として定義され、テストの
全分散に占める真値の分散の割合を見る、あるいは再検査によるテスト結果の安定性を
見るもので、内的整合性に特化したものではないので、正しくない。ただし、クロンバ
ックのα係数では内的整合性を図るという言い方をする場合もある (Cronback, 1951)こ
とに注意したい。信頼性と内的整合性の正確な議論は、
ここを参照のこと。
- B. は、正しい。
- チェビシェフの不等式を用いる区間推定の方法
まず、信頼性をρとすると、定義より
ρ=1-[V(E)/V(X)].
そこで、ρが既知だと V(X)は既知として、測定の誤差分散 V(E) がわかる。(これにより、
測定の標準誤差もわかる)。また、一般に V(X) は、
V(X)=V(T)+V(E),
が仮定されるので、V(E) と V(X) がわかれば V(T) がわかる。さらに、一般に
X=T+E, で、E(X)=E(T), が仮定されるので、結局 E(T) と V(T) がわかる
ことになる。これより、チェビシェフの不等式を用いれば、個人得点の真値 T が(区間)推定できることになる。
- Load & Novick (1968, pp.64-65) による点推定の方法
この方法は、検査得点のモデル
Xi=Ti+Ei,
に対して、回帰直線モデルを当てはめ、最終的には Tiの点推定値を
求める方法である。詳細は、Load & Novick (1968) を参照のこと。
- C. は、一般に項目数が増えると信頼性は高くなるので、間違い。
ただし、このことが言えるのは、項目間に平行性が成り立っている場合であるので、厳密
に言えば、「平行性が成り立っていない(下位)項目があれば、項目数を増やしても必ず
しも信頼性は高くならない」。
- D. は、α係数は、一回の検査から信頼性の推定をする1つの方法である
ので、正しい。
3) 問題36の評価
問題36は、信頼性の問題であり、これまで臨床心理士試験には頻繁に出題
されている。かなり、過去問的色彩が強いが、これまでのと比べて多少工夫が
なされている。
参考文献
- 肥田野直・瀬谷正敏・大川信明 (1961). 心理教育統計学 (p.184) 培風館
- Lord, F. M. & Novick, M. R. (1968). Statistical theories of mental
test scores. Addison-Wesley.
- 芝祐順 (1991). 項目反応理論 - 基礎と応用 東京大学出版会