平成8年度問題53への解答・解説
この頁は、平成14年9月20日に新たに開設しました。
この頁は、令和2年5月3日に一部更新しました。
このページでは、平成8年度問題53への解答・解説・問題の評価を行う。
1) 正解 e
2) 解説
この種の問題では一般的に言って、受験者が確信の持てる選択肢への正誤の
情報から解答を絞るのがよい。ここでは、順に簡単に解説する。検査の信頼性
に関するよく似た問題は最近では平成4年の
問題24 及び平成5年の問題42で
も出題されている。また、平成4年の問題24への
解答及び平成5年の問題42への解答も参
照されたい。
- A. は、信頼性は必ずしも検査項目間の内的整合性を測るものではない
ので、間違い。
- B. は、(クロンバックの)α係数は信頼性を推定する1つの方法である
ので、正しい。
- C. は 、妥当性と信頼性は定義上無関係であるので、正しい。
- D. は、再検査法は検査の信頼性を測るための1つの方法であるが、
異なる時点での測定結果の近さを測るものであるから、正しい。
3) 問題53の評価
問題53は、しばしば出題される検査の信頼性に関わるものである。ただし、A. は
少し注意が必要な問題である。なぜならば、例えば信頼性を推定する方法の1つである
α係数は、内的整合性に基づいているという言い方をする場合もあるからである(例えば、
Cronbach, 1951, p.300; 服部、1999)。
正確には、もともと検査の信頼性は平行検査間の相関係数とし
て定義されるもので、検査得点の安定性の1つの指標である。一方、
内的整合性 (internal consistency)なる概念のルーツは、たぶんGuttman (1941) に
遡り、信頼性というよりは、上記ホームページに示した数量化の基本的な1つの枠組みにか
かわる。この Guttman の提唱した複数の多肢選択肢項目に対する内的整
合性を最大にするような数量化(最適尺度法とも呼ばれる)により得られる得点は、
(信頼性の下限を与えるところの)クロンバックのαを最大化する
ことが Load (1958) により証明されている。この
ことは、西里(1975, p.169)や Load & Novick (1968, p.331) にも記されている。
その意味では、クーダー・リチャードソンの第20公式やクロンバックのαによる信頼性の推定
方法は検査項目の内的整合性にかかわるが、そのことは必ずしも、信頼性=内的整合性、を
意味するものでないことに注意が必要である。
引用文献
- Cronbach, L. J. (1951). Coefficient alpha and the internal structure of
tests. Psychometrika, 16, 297-334.
- 服部環 (1999). 項目「アルファ係数」 心理学辞典 有斐閣
- Guttman, L. (1941). The quantification of a class of attributes: a theory
and method of scale construction. In the Committee on Social Adjustment (ed.),
The Prediction of Personal Adjustment, New York: Social Science Research
Council, pp.319-348.
- Load, F. M. (1958). Some relations between Guttman's principal components of
scale analysis and other psychometric theory. Psychometrika, 23,
291-296.
- Load, F. M. & Novick, M. R. (1968). Statistical theories of mental Test scores.
California: Addison-Wesley.
- 西里静彦(1975). 応用心理尺度構成法ー質的データの分析と解釈ー 誠信書房