平成6年度問題20への解答・解説

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この頁は、平成14年9月12日に新たに開設しました。
この頁は、令和2年5月2日に一部更新しました。

 このページでは、平成6年度問題20への解答・解説・問題の評価を行う。

1) 正解 a

2) 解説

 この問題は、ピアソ ンの相関係数についての入門的知識があれば、すぐ解ける。ここでは、 しかしながら、仮に例えば共分散という概念を知らない受験者がこの問題を解く 場合を例に話しを進めてみよう。

 文章を最初から読んでいくと、A は「2つの変数の関連を表す」とあるので、 A に対する用意された選択肢を a から e まで見てみると、分散と標準偏差は 共に1つの変数に関する(ばらつきの)指標だということを理解しておれば、

と判断できる。

 つぎに「... A をそれぞれの変数の B の積で割った値であり」とあるので、 B の列の5つの選択肢を見ると、相関係数の定義から「 標準偏差 」が正しい。これで、正解は a にならざるを得ないが、万が一このことも知ら ないとすると次の C まで正解を保留せざるを得ない。

 もし A のみは分かっており B がわからないとすれば、「... 、測定値の 単位や C の大きさとは独立した関連の強さを示す指標である」まで読み進める ことになる。相関係数は、測定値の単位やばらつき具合には関係ない指標である ことを知っておれば、a と d のうち、a が正解とわかる。もちろん、最後の D は、相関係数が2変数間の(直線的)関係が強いほどプラスあるいはマイナス で1に近くなるので、「絶対値」が正しい。

3) 問題20の評価

 この問題は、ピアソンの相関係数についての入門的な(初等的な)問題であるが、 強いて問題点をあげるとすれば、問題の文章の中の1、2の語句の使い方があまり 適切であるとは思われない。

 1つは、「相関係数は、2つの変数の関連を表す A(共分散)...」とあるが、 正確には「2つの変数間の直線的関係の有無に関わる A ...」とすべきであろう。 相関係数は、あくまでも定量変数間の直線的関係の有無を表すための指標であり、 相関係数の定義式の中のとりわけ共分散 (covariance) が2変数間の関係が直線的 かどうかの情報を担っているので。また、この問題のように、「関連」という 用語は、定性的変数間の関 連もしくは連関の概念との区別がはっきりしないから。

 もう1つは、問題の文中の「独立」という言葉使いである。統計学では「独立」 という言葉はたいへん重要な役割を果たしている専門用語であり、統計的独立と 相関(共分散)という2つの概念は必ずしも等しくないので、軽々に使うべきで はなかろう。ここでは、「独立」の代わりに「無関係な」ぐらいが適切な表現と 言えよう。

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