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ここでは、単純な RB-p デザイン ANOVA データの SAS による分散分析を以下の 2つのセクションに分けて示す:
1.5.5.1 SAS による反復測度 RB-p デザイン ANOVA プログラムと その概要 |
1.5.5.2 SAS による反復測度 RB-p デザイン ANOVA プログラムの 出力結果の概要 |
1.5.5.3 ミラーリエル錯視の1要因反復測定データ |
反復測度RB-pデザインのプログラム例 |
この節では、1.5.2 節で述べた1要因反復測度デザインデータの ANOVA による
SAS プログラムの例を示す。SAS による反復測度 RB-p デザインの ANOVA 分析
のためには、通常 repeated 文を用いるが、後で触れるように特別の指定を
行わない限り、ANOVA と MANOVA の結果が同時に出力されてしまうので、注意
が必要である。球形検定結果の見方については、第2章を参照のこと。
ところで、反復測度デザインでも SAS は、repeated 文の contrast 項、もし
くは manova 文の m= の項に指定した個々の対比の検定
(多重比較)には、個別対比の誤差分散の推定値を
用いている。それにより出力される検定結果については、対比が
事前的(計画的)直交対比や
事前的非直交対比と見なせる場合には危険率のコ
ントロールは(球形仮説が満たされない場合)問題ない(より正確には、事前的非
直交対比と見なされる場合には、ダンの手続き(別名、
ボンフェロニ手続き)により
対比検定を行うと、危険率のコントロールが為されるという)(Boik, 1981; Maxwell,
1980; Kirk, 1982) が、事後的(非計画的)対比
と見なされる場合には、族あたりの危険率
(過誤率) のコントロールは十分ではない (Boik, 1981)。したがって、
事後的対比 の場合にはプログラムの
後方に示した Scheff\'e 修正をかけるのが1つの対処法である。
ただし、この方法も完全ではない。この種の1要因反復測度デザインデータで
対比が事後的(計画的)と見なされる場合に完全な危険率のコントロールを行う
ためには、つぎの節に示すホテリングの T2 統計量を用いた同時検定
が必要になる。
つぎのプログラム中のデータは、A 大学心理学科の25名の学生による鏡映描写
実験における星形図形一周に要した所要時間を、事前テスト、7回の練習試行、
事後テストの順に並べたものである。測定単位は秒である。ここではこのデータの
7回の練習試行についてのみ取り出し、1要因反復測度デザインデータとみて分析
する。
プログラムは、以下に示すように:
の7項から成る。単に、glm プロシジャの repeated 文を用いた 1要因反復測定 RB デザインの分散分析のみを行うには、これらの内の (1) 及び (2-1) だけを実行すれ ばよいが、1要因反復測定 RB デザイン ANOVA がらみの各種の分析を行うには この一連のプログラムを実行するとよい。
*-------------------------------------------------------------------------* | December 29, 1995 | | sas program--rb7mirr.sas | | example d of a sasprogram for glm procedure, especially a type of | | the randomized block design (RB-I). | | | | Cautions: | | | | (1) Contrast tests by the repeated statement of the glm procedure do | | not control the familywise error rate of these tests. The same is | | true for the contrast tests by the manova statement of the glm pro- | | cedure. SAS merely employs a separate estimate of experimental error | | for each contrast. | | | *-------------------------------------------------------------------------*; |
この部分は、このプログラムにおけるデータのソースと内容についての説明等を 示したものである。
options ps=60 ls=80; /* (1) data input */ data work; input ssno 2. (pre exer1-exer7 post) (4.); label ssno='sample number' pre='time consumed for a pre-test' exer1='time consumed for the 1st exercise' exer2='time consumed for the 2nd exercise' exer3='time consumed for the 3rd exercise' exer4='time consumed for the 4th exercise' exer5='time consumed for the 5th exercise' exer6='time consumed for the 6th exercise' exer7='time consumed for the 7th exercise' post='time consumed for a post-test'; cards; 1 98 81 48 51 47 31 41 28 41 2 46 48 36 28 31 26 22 22 22 3 65 47 62 35 35 34 25 25 36 4 89 55 28 35 31 28 23 23 31 5 71 103 112 67 70 68 42 39 36 6 55 53 33 28 28 22 23 20 35 7 62 38 44 25 22 21 19 20 41 8 75 55 49 42 35 38 37 33 41 9 90 56 34 39 27 27 20 26 47 10 76 62 61 47 45 43 44 40 53 11 186 127 102 96 102 76 70 56 71 12 79 37 35 29 38 35 31 28 48 13 53 36 36 32 29 34 23 24 23 14 82 41 42 42 35 34 27 29 35 15 42 38 29 29 26 22 20 18 20 16 40 50 34 27 22 23 15 18 20 17 51 29 28 26 29 32 25 25 33 18 124 91 52 33 34 40 28 33 50 19 111 89 51 40 41 35 32 26 77 20 85 41 44 41 60 39 34 30 39 21 35 28 29 27 25 24 23 22 28 22 33 34 31 28 27 24 26 19 25 23 30 33 24 25 21 23 16 19 19 24 42 41 35 35 32 30 27 25 23 25 50 36 38 29 30 32 24 24 30 ; |
この部分では、input 文の通常の入力形式で、データを入力させている。もっとも、 ここでの反復測定 RB デザインデータとしては、鏡映描写実験データのうち、事前 テスト (pre と表記) と事後テスト (post と表記)の結果は以降の分散分析には用いて いないことに注意されたい。
/* (2-1) repeated measures RB-7 ANOVA using proc glm */ title 'RB-7 ANOVA by proc glm repeated statement'; proc glm data=work; model exer1-exer7= / nouni; repeated treat 7 profile / summary printe printm; output out=temp residual=resid; run; |
ここでは、glm プロシジャの repeated 文を用いて、1要因反復測定 RB-7 デザイン
分散分析を行うためのプログラムを示す。model 文の左辺にはこの例のように反復測定
要因の各水準に付けた変数名リストを並べる。等号の右辺は、nouni とする。さらに、
repeated 文を用いて反復測定(測度)要因そのものの名前を子の例の treat
のように付ける。その右の 7 は、反復測定要因の水準数を指示する。さらにその右
側に、主効果が有意である場合の(反復測定水準間の)対比の種類を指定する。この
場合のように profile と指定すると、すべての隣接対比較を指定することになる。
ここで、SAS では反復測定要因の水準間のcontrast 文による対比検定においては、
独立測定要因の水準間対比検定の場合と多少異なり、誤差分散の不偏推定値
UE に関しては個々の対比の分散の不偏推定値で置き換えている。いずれ
にせよ、反復測定要因の場合も SAS では対比検定に際して、対比が事後的(非計
画的)対比と見なされる場合には、危険率のコントロールは十分ではない、
ので注意が必要である。
repeated 文のオプション(スラッシュ記号の右側)も重要である。まず、summary
オプションは被験者内要因(反復測定要因)の水準間対比(
多重比較
)ごとの分散
分析表などの出力を指示する。また、printe オプションは誤差行列の出力などと共に、
変換後の変数についての Mauchly の球形検定 (sphericity
test) を指示する。さらに、printm オプションは対比の変換行列 M
の出力を指示する。ここで、各対比の係数は当該行列の各列ではなく、各行であるこ
とに注意が必要である。
最後の output 文は、モデルの誤差項の推定値を一時ファイル(この例では temp と
いう名をつけた)に掃き出し、あとで誤差項の分析を行うためのもので、誤差解析を
行わないならば不要である。
ここでもし、ANOVA の結果のみを出力させたいならば、repeated 文を
repeated treat 7/ nom; |
と書き換えねばならない。nom 指定は ANOVA 出力だけを指定するためのオプション
である。ただし、こうすると ANOVA による主効果の F-検定における自由度修正後の
p-値、 Greenhouse-Geisser epsilon(G-G イプシロン)
、及び Huynh-Feldt epsilon (H-F イプシロン)
の推定値は出力されるが、肝心な Mauchly の球形検定結果が出
力されなくなる。 Mauchly の球形検定自身がデータを多変量的に扱わねば不可能だ
からである。
もちろん、第2章の 2.1.5 球形検定の
問題点と F-比の歪みへの対処法のところに示した Greenhouse と Geisser に
よる3段階手続き(the three-step G-G procedure
、以降
3段階 G-G 手続き
と略す)を用いるなり、
同じく第2章の 2.1.5 節に述べた
近似 F-検定
のみを行うのであれば、Mauchly の球形検定は不要である。
もし、Mauchly の球形検定結果を出力したければ、nom の後にさらに printe オ
プションも加える必要がある。ただし、こうすると今度は MANOVA 検定結果こそ
出力されないものの、MANOVA 検定の中間出力である誤差 SSCP 行列等も出力
されるので、ANOVA 検定結果のみを利用するときは、これらの情報は読み飛ばす
必要がある。
/* (2-2) (G)MANOVA analysis of repeated measures RB-7 design data using Hotteling's T-square statistic, which yields partly the same results as those of repeated measures RB-I ANOVA using repeated statement and which enables us to request arbitrary contrasts */ title 'RB-7 ANOVA data by proc glm manova statement'; proc glm data=work; model exer1-exer7=/ nouni; manova h=intercept m=(1 -1 0 0 0 0 0, 0 1 -1 0 0 0 0, 0 0 1 -1 0 0 0, 0 0 0 1 -1 0 0, 0 0 0 0 1 -1 0, 0 0 0 0 0 1 -1) mnames=c1_2 c2_3 c3_4 c4_5 c5_6 c6_7/ printh printe summary; run; |
このプログラムは、glm プロシジャで ANOVA 方式ではなく
一般化 MANOVA(generalized or general MANOVA、
略して GMANOVA)(別名、growth curve model
成長曲線モデル)、すなわち GMANOVA のみにより
反復測定 RB デザインデータを分析するためのものである。そのためには、上のように
repeated 文を使わず、manova 文を用いる。
一般的に言って GMANOVA では球形仮説の検定は不要であるので、結果にも球形
検定は出力されない。また、ANOVA による主効果の検定結果も出力されない(
もちろん、GMANOVA による主効果の検定結果は出力され、前項の repeated 文を用いた
場合の (G)MANOVA の結果と一致する)。また、対比検定(
多重比較)に関しても、repeated 文を用いた対比検定と同一の結果を出力する。
もっとも、この例でも明らかなように、repeated 文により指定可能な対比には
制約があるが、manova 文を使えばそれはなくなる。この例では、たまたま repeated
文で profile なるオプションを選んだので、ここでの manova 文の m= オプション
で、それと同等な結果を得るように対比行列を指定しただけである。
ただし、前項の (2-1) でも指摘したように、SAS では (G)MANOVA 方式で
反復測定デザインデータを分析し主効果や全体的交互作用の検定も可能であるが、
独立測定要因の場合と同様に、contrast 文を用いた対比検定においては、対比
が事後的(非計画的)対比と見なされる場合には族あたりの危険率のコントロール
は十分ではない点に注意が必要である。
/* (2-3) compute means of repeated measures */ options ps=30 ls=80; proc summary data=work print n mean std; var exer1-exer7; output out=work2 mean=aver1-aver7; run; data xyplot; set work2; array av(7) aver1-aver7; do x=1 to 7; averg=av(x); output; end; drop aver1-aver7; run; proc plot data=xyplot; plot averg*x; run; |
これでは、まず summary プロシジャを使って、反復測度の各水準の平均値を 計算し一時ファイル work2 に掃き出し、それを使って data ステップで水準変数 を追加し、最後に plot プロシジャで反復測度の各水準の平均値をプロットする ためのプログラムを示している。
/* (3-1) posterior analysis (1): histogram plot of error estimates */ title 'histogram of the error estimates '; proc chart data=temp; vbar resid; run; /* (3-2) posterior analysis (2): test for normality of error estimates */ options ps=60 ls=80; title 'test for global normality of the dependent variable'; proc univariate data=temp normal; var resid; run; |
ここでは、(2-1) の項で計算し一時ファイル temp に掃き出したモデルの誤差項の 推定値 resid を受け取り、chart プロシジャでヒストグラムを書かせ、さらに同推定 値を univariate プロシジャの normal オプションを指定することにより、正規性の 検定を行うためのプログラムを示す。
/* (3-3) posterior analysis (3): Scheffe-type familywise control of the test size using the F statistics computed by using the contrast option of the repeated statement of the glm procedure. < Caution! > The following program must be executed in a separate SAS session after the above session is finished. */ data work3; c1_2f=10.04; /* for contrast, 1 -1 0 0 0 0 0 */ c2_3f=10.67; /* for contrast, 0 1 -1 0 0 0 0 */ c3_4f=0.22; /* for contrast, 0 0 1 -1 0 0 0 */ c4_5f=4.65; /* for contrast, 0 0 0 1 -1 0 0 */ c5_6f=15.02; /* for contrast, 0 0 0 0 1 -1 0 */ c6_7f=3.61; /* for contrast, 0 0 0 0 0 1 -1 */ i=7; /* i=number of repeated measures */ k=25; /* k=number of samples */ ndf=i-1; ddf=k-1; fschef1=c1_2f/ndf; fschef2=c2_3f/ndf; fschef3=c3_4f/ndf; fschef4=c4_5f/ndf; fschef5=c5_6f/ndf; fschef6=c6_7f/ndf; array fs(6) fschef1-fschef6; array ps(6); do k=1 to ndf; ps(k)=1-probf(fs(k),ndf,ddf); end; drop i k ndf ddf; run; title 'sas original and Scheffe adjusted F tests'; proc print data=work3; run; |
ここでは、(2-1) やそれと等価な (2-2) の項の分析における6つの対比検定(
多重比較
)の
族あたりの危険率(過誤率)
のコントロールを Scheffe 方式で行うためのプログラムである。この方式は、1.3.6
節の SAS による完全無作為化デザインの分析のところで行ったと同一の方法であり、
1.3.5 節の Scheffe の S 法による。
ただし、この方式による危険率のコントロールも、反復測定要因の水準間対比の
で対比が事後的(非計画的)と見なされる場合には、理論的には完璧とは言えない。
理論的に最もすっきりした危険率のコントロールは、1.5.3 節で紹介した Hotelling
の T2 統計量に基づく同時検定方式、とりわけ (1.140) 式を用いるも
ので、つぎの 1.5.6 節の SAS/IML を用い直接この式を計算する方法である。
rb7mirr.sas |
うえのプログラムを実行すると、以下のような出力結果が得られる:
M Matrix Describing Transformed Variables EXER1 EXER2 EXER3 EXER4 EXER5 EXER6 EXER7 TREAT.1 1.00000 -1.00000 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 TREAT.2 0.00000 1.00000 -1.00000 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 TREAT.3 0.00000 0.00000 1.00000 -1.00000 0.00000 0.00000 0.00000 TREAT.4 0.00000 0.00000 0.00000 1.00000 -1.00000 0.00000 0.00000 TREAT.5 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 1.00000 -1.00000 0.00000 TREAT.6 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 1.00000 -1.00000 |
ここでは、(2-1) の項の glm プロシジャの中の repeated 文で指定した反復測定 変数間の対比の種類 profile に対応する6つの対比変数 TREAT.1 から TREAT.6 の 具体的な係数を横に6セット並べたもので、1.6.3 節の >MANOVA の多変量一般線形 仮説 (1.184) 式の M 行列にあたる。ただし、上のように、SAS では GMANOVA における M 行列の行と列を転置したものを M 行列として出力しているので、 注意が必要である。
Test for Sphericity: Mauchly's Criterion = 0.0124373 Chisquare Approximation = 95.54024 with 20 df Prob > Chisquare = 0.0000 Applied to Orthogonal Components: Test for Sphericity: Mauchly's Criterion = 0.0037866 Chisquare Approximation = 121.43923 with 20 df Prob > Chisquare = 0.0000 |
ここでは、repeated 文を伴う glm プロシジャによる Mauchly の球形検定結果が
得られている。検定はこのように2種類出力されるが、ユーザーは後者の直交要素の
場合のそれを見る必要がある。この結果からは、明らかにこのデータの場合、球形仮
説は1パーセント以上の高い水準で棄却されることがわかる。したがって、この場合
後続の ANOVA 検定では、原則的には自由度を G-G epsilon、または H-F epsilon
の推定値により修正した方の F-検定結果を見るべきである。
一方、第2章の 2.1.5 節に述べた
3段階 G-G 手続き
を用いるなり、
近似 F-検定
を用いるならば、上のプログラムのところでも述べたように、ここでの球形検定は
不要である。
つぎの出力は、同一データの MANOVA 方式(正確には GMANOVA)による反復測定 要因の主効果についての検定結果である。これは正確には、1.5.3 節で述べたホテリ ングの T2 統計量を用いた主効果の検定結果である。ここで、GMANOVA では ANOVA 方式の場合のような球形仮説についての前提は何ら必要がない点に 注意せよ:
Manova Test Criteria and Exact F Statistics for the Hypothesis of no TREAT Effect H = Type III SS&CP Matrix for TREAT E = Error SS&CP Matrix S=1 M=2 N=8.5 Statistic Value F Num DF Den DF Pr > F Wilks' Lambda 0.28885101 7.7963 6 19 0.0002 Pillai's Trace 0.71114899 7.7963 6 19 0.0002 Hotelling-Lawley Trace 2.46199244 7.7963 6 19 0.0002 Roy's Greatest Root 2.46199244 7.7963 6 19 0.0002 |
この後にようやく ANOVA 結果の出力と G-G epsilon、及び H-F epsilon の 推定値が現れる。
RB-7 ANOVA by proc glm repeated statement 22 General Linear Models Procedure Repeated Measures Analysis of Variance Univariate Tests of Hypotheses for Within Subject Effects Source: TREAT Adj Pr > F DF Type III SS Mean Square F Value Pr > F G - G H - F 6 13208.29714286 2201.38285714 30.40 0.0001 0.0001 0.0001 Source: Error(TREAT) DF Type III SS Mean Square 144 10427.70285714 72.41460317 Greenhouse-Geisser Epsilon = 0.3871 Huynh-Feldt Epsilon = 0.4311 |
ここでの出力結果のうち、F Value 及びそのすぐ右側の Pr > F は、反復測定に
よる分布の歪みを考慮しない場合の主効果の F-値と p-値であり、Adj Pr > F の
下の G - G 及び H - F は、F-分布の自由度を G-G イプシロン、及び H-F イプシロ
ン修正した後の p-値を示す。
このデータの場合は、うえの Mauchly の球形検定の結果、球形仮説が棄却されて
いるので、原則的にはうえの出力のうち自由度を修正した場合の p-値を見る必要が
ある。もっとも、このデータでは自由度を修正しようがしまいが、結果的には p-値
は少数以下第4位まででみると検定結果は変わらない。最後に両イプシロンの推定値
が出力されている。
ここで、第2章 2.1.5 節で述べた球形検定を行わないところの1、2の方法で検定
してみよう。まず、
近似 F-検定
を用いるならば、
最初から球形検定は行わず、うえの出力結果のうちの Adj Pr > F の p-値のみを
見て検定を行えば良いので、TREAT なる主効果(練習効果)は1パーセント以上の
高い水準で有意であると言える。
つぎに、
3段階 G-G 手続き
により検定してみよう。
この場合には、まず第1ステップ(の最もリベラルな検定)で、上の F Value とす
ぐ右横の Pr > F の値を見て、練習効果は有意であるので、つぎのステップへ進
む。つぎに第2ステップ(の最も保守的な検定)では、数表を見るなり SAS の data
ステップで計算するなりして第1自由度が1、第2自由度が144の場合の F-値の
棄却点の値を知る必要がある。この場合その値は、例えば有意水準1パーセントで、
6.81 である。これに対して標本での F-値は 30.40 なので、第2ステップでも練習
効果は有意である。その結果、検定はここで終了することになる。結論は、練習効
果は有意である、ということになり、このデータの場合結果的には3つの方法の
いずれで検定を行っても、検定結果は変わらないことになる。ただし、いつでも
どんなデータでもこうなるというわけではない。
最後に、前項の同一データに対する GMANOVA の結果と、ここでの反復測定デザイン
ANOVA の結果のいずれを選択するべきかについては、
第2章第2節(2.2 節)を参照のこと。
つぎの出力は、repeated 文の contrast 項で指定した profile に対応する 対比検定( 多重比較 )の結果である。何度も指摘したように、SAS では repeated 文もしくは manova 文で指定した contrast については、個別対比の誤差分散の推定値を 分母にした対比検定を行うので、対比が事後的(非計画的)と見なされる場合には、 族あたりの危険率のコントロールは十分ではない、点に注意する必要がある。反 復測度の場合、このような対比の検定方式は、誤差間の相関の情報を利用している という点で、プールした誤差分散の推定値を用いるよりは多くの場合より適切であ るが、十分とは言えない (Boik, 1981)。
General Linear Models Procedure Repeated Measures Analysis of Variance Analysis of Variance of Contrast Variables TREAT.N represents the nth successive difference in TREAT Contrast Variable: TREAT.1 Source DF Type III SS Mean Square F Value Pr > F MEAN 1 2152.96000000 2152.96000000 10.04 0.0041 Error 24 5145.04000000 214.37666667 Contrast Variable: TREAT.2 Source DF Type III SS Mean Square F Value Pr > F MEAN 1 1310.44000000 1310.44000000 10.67 0.0033 Error 24 2948.56000000 122.85666667 Contrast Variable: TREAT.3 Source DF Type III SS Mean Square F Value Pr > F MEAN 1 7.84000000 7.84000000 0.22 0.6442 Error 24 860.16000000 35.84000000 Contrast Variable: TREAT.4 Source DF Type III SS Mean Square F Value Pr > F MEAN 1 262.44000000 262.44000000 4.65 0.0413 Error 24 1354.56000000 56.44000000 Contrast Variable: TREAT.5 Source DF Type III SS Mean Square F Value Pr > F MEAN 1 615.04000000 615.04000000 15.02 0.0007 Error 24 982.96000000 40.95666667 Contrast Variable: TREAT.6 Source DF Type III SS Mean Square F Value Pr > F MEAN 1 81.00000000 81.00000000 3.61 0.0694 Error 24 538.00000000 22.41666667 |
ここでの6つの対比検定結果は、もちろん出力結果 3. の項で示した6つの対比に
対応する検定結果である。これらの結果からは、6つの対比のうち TREAT.1、TREAT.2、
TREAT.5、が1パーセント以上の高い水準で、TREAT.4 が5パーセント
水準でそれぞれ統計的に有意であることを示している。また、TREAT.6
の対比は有意な傾向にあると言える。出力結果 3. の項の具体的な対比の係数から、
例えば TREAT.1 の対比は、7つの反復測定変数、すなわちこのデータの場合、鏡映
描写の7試行のうちの第1試行と第2試行の平均値の差を意味しており、上の結果
はこれが有意であることを示している。
ただし、プログラムのところで指摘したように、SAS で反復測定要因の水準間対比
を検定する場合、独立測定要因の水準間の対比の場合と異なり、通常の誤差分散の
不偏推定値 UE を個々の対比の分散の不偏推定値で置き換えてはいるが、
このやり方は、対比が事前的直交対比(この場合、対比が少なくとも相互に直交して
いることは明らか)と見なせる場合や、事前的非直交対比と見なせる場合には
よいが、対比が事後的(非計画的)な場合には、族あたりの危険率のコントロー
ルは十分とは言えない点に注意が必要である (Boik, 1981)。
ここでの出力は、manova 文を用いた glm プロシジャによるもので、repeated 文を
用いる場合と (G)MANOVA に関しては同一結果をもたらすように組まれたプロ
グラムによる。その意味では、(2-1) と (2-2) のプログラムは重複していることに
なるが、manova 文を用いるメリットもあるのである。というのは、repeated 文によ
る対比には SAS による制約があり、任意の対比についてこれを行おうとすると、
manova 文による m= の項を用いなければならないし、既にプログラムのところで指摘
したように、GMANOVA では球形仮説は不要だからである。
もっとも、manova 文を用いるこの方法では、反復測定変数間の対比に制約がない
分、その m= オプションのところに必要な対比の係数を横にして幾つか並べて指定
しなければならないし、さらにそれらの対比に好き勝手な名前をつけることが可能
である。ここでは、そのためのプログラムの項を見ればわかるように、これら6つの
対比に mnames= オプションにより c1_c2、c2_c3、...、c6_c7 なる名前を付けて
いるので、出力結果にも対比変数名はそのように出ている。
いずれにせよ、結果は GMANOVA に関しては 対比変数の名前の違いを除い
て repeated 文による glm の結果と同一なので、ここでは省略した。
RB-7 ANOVA by proc glm manova statement 30 Variable Label N Mean Std Dev ---------------------------------------------------------------------------- EXER1 time consumed for the 1st exercise 25 53.9600000 25.2677001 EXER2 time consumed for the 2nd exercise 25 44.6800000 21.3360415 EXER3 time consumed for the 3rd exercise 25 37.4400000 15.6100395 EXER4 time consumed for the 4th exercise 25 36.8800000 17.7607245 EXER5 time consumed for the 5th exercise 25 33.6400000 13.1620667 EXER6 time consumed for the 6th exercise 25 28.6800000 11.5712287 EXER7 time consumed for the 7th exercise 25 26.8800000 8.4819416 ---------------------------------------------------------------------------- RB-7 ANOVA by proc glm manova statement 31 プロット : AVERG*X. 凡例 : A = 1 OBS, B = 2 OBS, ... AVERG | 60 + | |A | 50 + | | A | 40 + | A A | | A 30 + | A A | | 20 + | -+-----------+-----------+-----------+-----------+-----------+-----------+ 1 2 3 4 5 6 7 X |
ここでのグラフの縦軸は、鏡映描写における星形図形を一周するのに要した時間 (の平均値)で、単位は秒である。被験者が練習試行を繰り返すうちに、所要時間は 徐々に減少していくことがわかる。上記の対比検定は、隣接試行間の対比に関する 検定であった。
histogram of the error estimates 32 Frequency | ***** | ***** | ***** 10 + ***** | ***** | ***** | ***** | ***** 5 + ***** | ***** ***** | ***** ***** ***** ***** | ***** ***** ***** ***** | ***** ***** ***** ***** ***** ***** ------------------------------------------------------------------------- -30 -10 10 30 50 70 RESID 中間点 test for global normality of the dependent variable 33 Univariate Procedure Variable=RESID Moments N 25 Sum Wgts 25 Mean 0 Sum 0 Std Dev 25.2677 Variance 638.4567 Skewness 1.51541 Kurtosis 1.820971 USS 15322.96 CSS 15322.96 CV . Std Mean 5.05354 T:Mean=0 0 Pr>|T| 1.0000 Num ^= 0 25 Num > 0 9 M(Sign) -3.5 Pr>=|M| 0.2295 Sgn Rank -30.5 Pr>=|S| 0.4229 W:Normal 0.824513 Pr < W 0.0004 ................. ................. ................. |
ここでは、(3-1)、(3-2) の項の chart プロシジャや univariate プロシジャによ るモデルの誤差項のヒストグラムとその正規性の検定結果を示す。この場合、W:Normal の項の p-値からは誤差項の正規性は棄却されている。
sas original and Scheffe adjusted F tests 34 OBS C1_2F C2_3F C3_4F C4_5F C5_6F C6_7F FSCHEF1 FSCHEF2 FSCHEF3 FSCHEF4 1 10.04 10.67 0.22 4.65 15.02 3.61 1.67333 1.77833 0.036667 0.775 OBS FSCHEF5 FSCHEF6 PS1 PS2 PS3 PS4 PS5 PS6 1 2.50333 0.60167 0.17088 0.14628 0.99975 0.59733 0.050353 0.72623 |
ここでは、前のセッションで得た対比検定の F-値を Scheffe 修正したものである。
まず、OBS に続く C1_2F、C2_3F、等は、以前に述べた6つの対比 C1_2、C2_3 等の
それぞれについての、族あたりの危険率のコントロールを行わない場合の対比検定の
F-値であり、(2-1) の項の repeated 文による glm プロシジャでは TREAT.1、
TREAT.2、等に対応する F-値として既に出力されたものに等しい。
これに対して、これらの右の FSCHEF1、FSCHEF2、等は、Scheffe 方式により
族あたりの危険率のコントロールを行った場合の F-値であり、さらに最後の PS1、
PS2、等は、その場合の p-値である。これらの結果を (2-1) の項の族あたりの
危険率のコントロールを行わない場合の p-値と比べると、危険率のコントロールを
行った場合には、PS5 すなわち5つ目の対比すなわち第5試行と第6試行の平均値
の差のみ有意な傾向が見られるに過ぎない。
ここでは、うえの鏡映描写データと異なるもう1つの1要因反復測定データ として、ミラーリエル錯視データを取り上げる。データは、平成30年度計量心理学 演習の13名の受講者によるもので、30度15mm、30度30mm、30度45㎜ 条件での錯視 条件に対し、すべての被験者が反応したものである。なお、13名のデータのうち、2名 については錯視量が極端に小さかったので、外した。
プログラムのダウンロード・コーナー |
rb3-illusion.sas |
うえのような反復測定デザイン、すなわち同一実験参加者がすべての水準の測定を行うと水準間には 一般には何らかの相関が生じる。反復測定デザイン分散分析を施す前に、上記角度水準3水準のデータ を用いて水準間の相関を計算した結果は次のようになる:
図2からは、角度要因3水準間には高い相関があることが明らかである。ただし、相関が高ければいつも F-統計量が歪むかというと必ずしもそうではない。実際、分散分析に先立ち、主効果の F 統計量が歪む可 能性を考慮して Mauchly の球形検定を行ったところ、以下のようになった:
図3の直交要素に関する球形検定の結果から、このデータでは球形仮説は成り立っていることがわかる。 そこで、このデータの場合、つぎの分散分析における主効果(角度の効果)の F-統計量は歪まないと言える。
実は、Mauchly の球形仮説が成り立つという仮説は、千野のホームページの反復測定分散分析第2章の 2.1.1 節 対称性仮定と球形仮定、の (2.5) 式で表される。これは、もとの変数を正規直交化した場合、 単位行列の定数倍になることを意味している。そこで、上記データを正規直交化し、その結果として得られ る正規直交2変数の共分散行列を計算させると、つぎのようになった。
この行列の各要素を例えばすべて13で割った行列を計算すると、対角要素はともに1に近く、非対角要素 は、-0.28 となり、相対的には対角要素が1で非対角要素が0の単位行列に近いものとなっていることがわか る。このことは、このデータでは球形仮説に近い状態が生じていることを意味し、その結果、球形仮説は採択 されたと見れよう。
図5の分散分析では、球形検定の結果を考慮して、分散分析表の F-統計量のうち歪みを修正(調整)しない 場合に対応する p-値を見ると、0.0492 となっているので、角度要因の効果は5%水準で有意であると言える。
最後に、このデータにおける角度要因の3水準ごとの平均をプロットしたものが図6である。
図4から、斜線分の角度を30度、45度、60度と大きくしていくと、錯視量は単調に減少することが わかる。