千野 ISAC 研究室(Chino ISAC Office)
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このホームぺージは、1996年3月18日に新たに開設しました。
このホームページは、2024年9月17日に一部を更新しました。


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 例えば Chino (2019a, 2020a,b,c)で指摘したように、医学や生物学の分野の研究で、対象間の相互作用に対する関心が高まっ ている(例えば、Imai et al., 2014; Park & Greenberg, 2005; Sato et al., 2002; Tian et al., 2016; Vega et al., 2013; Yamada et al., 2000)。これらの分野の研究では、対象相互の相互作用は、物理界における相互作用とは対照的 に、一般に非対称である。例えば、Imai et al. (2014) は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (nicotinamide adenine dinucleotide)の生合成経路 (biosynthetic pathways)について報告している。そのような合成経路は、それ がグラフ理論 (graph theory) (例えば、Bang-Jensen & Guttin, 2007; Christofides, 1975)におけるある種の有向 グラフ (directed graph、別名 digraph)として表現できるので、要素が二値である非対称行列 (asymmetric matrix)に 変換できる。クオラムセンシング(quorum sensing、別名集団感知)では、幾つかのバクテリアは、彼らの宿主のいる 環境に対してオートインデューサー (autoinducer、別名自己誘導物質)と呼ばれるシグナル伝達分子 (signaling molecule)を分泌し、それがある閾値に達すると、彼らは特別の物質を分泌することにより再び環境に応答する(例えば、 Parsek & Greenberg, 2005; Vega et al., 2013)。Tian et al. (2016)は、中脳のドーパミン系の研究を行い、腹側 被蓋野 (ventral tegmental area、略してVTA)(Schultz et al., 1977) の中のドーパミンニューロン (dopamine neurons) が予測報酬誤差 (reward prediction error、略して RPE)を計算する、と考えた。彼らは、RPE のような単純な 算術計算でさえ、特別な脳の領域に局在しているのではなく大域的な脳のネットワークにおける多重ノード (multiple node) 間に分布していることを見つけている。そのようなネットワークは、対応する重み行列 (weight matrix) が一般には 非対称な複雑な有向グラフ (weighted digraph) によって記述されるであろう。非対称性は、それ以外にも社会行動科学 領域の文献で報告されている(例えば、Chino, 2012)。Close (2000) は、多くの科学の領域におけるいろいろな非対称 現象を取り上げ、非対称性の意味を議論している。Chino (2020b,c)はエルミート形式モデル (Hermitian Form Model, 略 して HFM) (Chino & Shiraiwa, 1993) を用いて同様な4か国間の貿易不均衡の 分析を行っている。また、Chino (1978) は 著者が開発した非対称多次元尺度法の1つを用いて10か国の間の貿易の不均衡の分析を行い、国家間の非対称な関係を図 式化している。非対称性は、幾つかの文献では(実験的に得られるものではない)仮説的な非対称行列に対して分析 することも可能である。例えば、Sato et al. (2002) は、ゲーム理論 (theory of games) とMaynard and Price (1973) に よって導入された進化的安定戦略 (Evolutionally stable strategy, ESS) の概念に基づき、じゃんけん(rock-paper-scissors) のゲームをすることを学習する問題を検討している。
 このような多くの関心に答えて、千野 ISAC 研究室 (Chino ISAC office) は、平成9年 度当時愛知学院大学文学部心理学科に所属していた千野が立ち上げ、平成15年から同大学心身科学部に移籍した後も 継続していたホームページ「千野研究室」を、退職に伴い令和2年度から一部を引き継ぎ、新たに開設した「千野非対 称性・カオス研究所」(Chino Institute for the Studies of Asymmetry and Chaos, 略して Chino ISAC) の研究室で あり、研究所の役割は、
 (1)社会行動科学から自然科学に亘りしばしば観測される複数の対象相互の非対称(関係)行列(非対称な関係 を行列の形にまとめたもの)を分析するための数学理論及び統計学的方法を開発すること、及び
 (2)それらの理論や方法の適用例と、そのための MATLAB プログラム(コード)を示すことである。
 ここで、当該研究所で取り上げる対象は、人、地域、国、鶏、猿などの生物、ウイールス、細菌、神経細胞、 臓器など、である。そこで、「対象相互の非対称(関係)行列は、例えば、心理学ではクラス集団の成員間の 親近度行列など、国際貿易では国家間の貿易量を要素とする行列など、神経細胞の場合例えば脳神経のボクセル間 相互作用など、である。
 一般に、対象相互の非対称な関係を分析するには、対象相互の(全体)構造とダイナミックスとを区別するとよ いであろう。ただし、物理学における重力場の場合、相対論の世界では星々の間のダイナミックスの違いが星々の 間の空間構造を規定しており、その限りではない (Einstein, 1916)。いずれにせよ、前者の解析には、計量心理学 の分野で開発された非対称 MDS (Cox & Cox, 2001; Chino, 2012; Saburi & Chino, 2008) を、とりわけ Chino and Shiraiwa (1993) により提案されたエルミート形式モデル (Hermitian Form Model、略して HFM)を、用いるとよい であろう。この論文の千野・白岩の定理によれば、対象はあるゆるい条件下で(複素)ヒルベルト空間に埋め込む ことができる。言い換えれば、対象の空間構造はあるゆるい条件下でヒルベルト空間構造をなす、ということである。 なお、HFM のマニュアルについては、例えば Chino (2020a) を参照されたい。一方、HFM におけるヒルベルト空間と 量子力学におけるヒルベルト空間との関係については、Chino (2020b) を参照されたい。 後者のダイナミックスについては数学の分野の力学系とその定性理論 (例えば、Guckenheimer & Holmes, 1983)、 とりわけ複素力学系(domplex dynamical system) の知見を用いる (例えば、Milnor, 2000; 上田ら, 1995)。
 さらにこの日本語版では、これまで千野が主として教育のために構築してきた統計学的知見、とりわけ反復測定 デザイン分散分析、心理統計学の基礎、線形・非線形時系列解析の基礎、などについても、これまでの千野のホーム 頁を受け継いで掲載する。


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